意地悪な俺様上司と秘密の同居生活~異性には無関心だと思っていた彼だけど、結構独占欲強めの人でした~
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「――って事があったの! 有り得ないと思わない!?」

 昼食を広告代理店勤務の繭ちゃん、明音ちゃんと共に近くの噴水広場でとっていた私は、昨日起きた出来事を掻い摘んで説明して同意を求めていた。

「まぁ確かに、それは嫌かも」
「だね。その考えは私も無理かな」
「だよねぇ!」

 二人の言葉を聞いて、やはり自分の考えは間違っていなかった事を再確認して安堵する。

 仕事に来て顔を合わせるのは気まずかったけれど今日は運が良いらしく、日吉さんはクライアントとの打ち合わせで外に出ていて、朝少し顔を合わせ会話も仕事の事を一言、二言交わした程度なので特に気まずさはなかった。

 ただ、戻りは午後になるという事で仕事は資料整理を任されていたのだけど、昨日のシュレッダー同様あまり身にならない仕事ばかりで物足りなさを感じていた。

 欲を言えばクライアントとの打ち合わせに同行したかったのだけど、昨日入ったばかりの新人が同席出来るわけがない。

 顔を合わせたくはないけれど、日吉さんが戻ってこないと次の仕事がもらえないので困ったものだ。

(これじゃあ……戻るのを心待ちにしてるみたいで、嫌だな)

 とは言え昨日の事を思い返すとやはり顔を合わせづらいので、出来れば戻ってくるのは遅い方が嬉しい。

「そう言えば、その日吉さんって、広告代理店(うち)でも人気みたいだよ」
「そうそう、先輩たちが話してたもんね」
「イベント企画の方がイケメン沢山いて、中でも日吉さんは別格だって」
「私たちは日吉さんがどんな人か分からないけど、そんなにカッコいいの?」
「うーん、まぁ、カッコいい……とは思う。確かに、イケメンの部類に入るよ」

 二人の質問に、サンドイッチを頬張りながら答える。

 カッコいいか悪いかと聞かれれば、日吉さんはカッコいいと思う。それは否定しない。けど、あくまで外見だけ。中身は最悪だ。

「っていうか、顔が良くても性格がね……。あれは自分がモテるって分かってるから、調子に乗ってるのよ」

 サンドイッチを食べ終え、残ったカフェオレを一気に飲み干した私が言い終えた、その時、

「ほお、随分言ってくれるな?」

 どこからともなく聞こえてきた聞き覚えのある声に、私の身体は一気に凍りついた。
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