🆕僕に依存してほしい。【ピュアBL】
 今日は旅行の日。

 それぞれ家族ごとに車を出した。悠生くんは、僕と一緒に小谷家の車に乗った。うちの車の席は3列で一番前にお父さんお母さん。真ん中に僕たち、一番後ろは椅子をたたんでスキーとか荷物が置いてある。

 スキー場に着くまでだいたい2時間ぐらいかかる。冬道は雪がじゃまして、もっとかかるっぽい。悠生くんと一緒にスマホでゲームをしてたけど、途中でちょっと酔ってきちゃった。車を停めてもらって、道の駅で休憩した。具合悪いのが治まってきてからトイレに行くと、怜くんとばったり。僕は慌てて目をそらしちゃった。

「どうした? 顔色悪いけど、具合悪いのか?」
「う、うん。でも休んだから大丈夫だよ」

 それだけ言うと、逃げるように僕は車に戻っていった。本当はさけたくないのに、あの日以来気まずいのは、僕の方からさけちゃってるからっぽい……。

「どうしたの? まだ調子悪い?」

 車に戻ると、悠生くんが僕の顔を覗き込んだ。

「酔ったのは、休んだからもう大丈夫だけど……」
「だけど?」
「トイレで怜くんと合って、話しかけてくれたのに避けるようにトイレから出てきちゃった」

 悠生くんは無言で一番後ろの席にある毛布を手に取った。そしてそれをふたりの膝にかけて。

「先輩のことばかり考えないでよ……寂しい」って小さい声で言って、誰にも見えないように手を握ってきた。

 そうだよね、悠生くんは僕が好きで。
 好きな人が別の人の話ばかりしてちゃ、寂しいよね。

 スマホばかり見ている怜くんの姿が頭の中に浮かんできた。また怜くんのこと考えちゃった。

 僕は間違えた絵をぐちゃぐちゃと黒いペンで消すように、怜くんのことも頭の中から消した。

「悠生くん、ごめんね」。

 
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