破局は極上の恋の始まり? 恋人に振られたら幼馴染にプロポーズされました【交際0日婚シリーズ】
第2話
 あのいきなりのプロポーズから三ヶ月後。私は名の知れた高級ホテルにいた。

 とはいっても、遊びに来たわけじゃない。今日、ここのレストランの個室で両家の顔合わせ……となったのだ。

(正直、頭がついていかない……)

 ずきずきと痛む頭を押さえる。そうしていれば、ホテルの人にエレベーターホールまで案内される。

「レストランは十五階でございます」

 そう言われて、私と両親はエレベーターに乗り込んだ。そのまま流れ作業でボタンを押せば、扉が閉まる。

 エレベーターが動き出して、私はようやくほっと息を吐いた。

「それにしても、まさかこんなことになるなんてねぇ……」

 ラフな格好の多いお母さんは、今まで見たことがないほどに着飾っていた。……そりゃそうだ。こんな高級ホテルのレストランに来るのに、ラフな格好なんていただけない。

 なので、今の私の格好もそれ相応に見える深いブルーのワンピース。髪の毛は一つに結い上げていて、いつもは履かないヒールの靴に怯えている。

「それにしても、葵。……本当に、いいのか?」

 お父さんがそう問いかけてくる。

 その「いいのか?」の意味なんて、よくわかっている。

「……ここまで来たら、引き返せないでしょ」

 ため息交じりにそう言えば、お父さんは眉を下げた。

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