破局は極上の恋の始まり? 恋人に振られたら幼馴染にプロポーズされました【交際0日婚シリーズ】
「じゃあ、ここにサインして」
「う、ん?」

 サインって、なに……?

 そう思って私は差し出された紙を見つめる。

「……ねぇ、仁くん」
「あぁ」
「これ、見間違いじゃなかったら婚姻届けな気が、するんだけど……」

 頬を引きつらせて、そう問いかける。そうすれば、仁くんはきょとんとしていた。

「そうだけど」
「そうだけど、じゃないでしょ!?」

 どうして婚姻届けにサインをする話になるんだ。ついでに言えば、どうして保証人の欄にお母さんの名前があるんだ。

 ……一体、いつ許可を取ったんだ。……あ、さっきか。

「どうしてそういう話になるの……?」

 手が震えているのがわかる。どうして、仁くんが私にプロポーズしているんだ。挙句、交際していたわけでもないのに……。

「だって昨日、俺と葵は結婚することになっただろ?」
「……なに、言って」
「あぁ、そうか。……わかった」

 なにがわかったのか、私にはまったく理解できない。

 その所為でさらに頬を引きつらせていれば、仁くんが私に近づいて来て、手を取った。

「まだ正式に指輪とか作ってないけど、後で作りに行こう。葵の好きなデザインでいい」
「……え、あの」
「――葵、俺と結婚してくれ」

 一秒、二秒、三秒。

 しばらくして、私の絶叫が部屋中に響き渡った。
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