惑わし総長の甘美な香りに溺れて
「お願い萌々香。私、久斗に怒ってはいるけれど同じくらい信じたいって思ってるんだ。だからどうしても知りたいの」


 南香街の危険さを思い起こしていると、もう一度頼まれる。

 この必死さだと、私が断っても一人で行ってしまいそうだと思った。


 ……仕方ないか。


「うん、分かった。ついてくよ」

「っ! ありがとう、萌々香」


 朝、泣きはらしている景子を見てなんとかしてあげたいと思った。

 ついて行くことで少しでも力になれるって言うなら、一緒に行ってあげたい。

 それにきっと、日のあるうちならそこまで危険はないだろうし。

 そう自分で納得していると、廊下の方から「モモ-」となじみのある声が聞こえてきた。


「あ、景子、ちょっと待ってて。陽に今日は一緒に帰れないって言っておかなきゃ」


 景子に断りを入れてすぐに陽のところへ行く。


「なにしてんの? 帰る準備は?」


 鞄を持たずに来た私にコテンと首を傾げて不思議そうにする陽。

 そんな姿すらかわいくて不覚にもキュンとしてしまった。
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