惑わし総長の甘美な香りに溺れて
SudRosa
 翌日の朝、景子からお礼の電話があった。


『本当にありがとう! 萌々香のおかげだよ!』

「……ふぇい?」


 前日に色々ありすぎたせいでアロマもさほど効かなかったのか、寝坊して出た電話に間抜けな声を返してしまった。


『もう、まだ寝てたの? 昨日の放課後のことよ。久斗、萌々香の言う通り何かの香りのせいでおかしくなってたんだって』


 少し笑う声が聞こえて、恥ずかしさで少し後悔しながら体を起こす。

 ちゃんと起きてから出れば良かった。


『土日はちょっと入院しなきゃならないらしいんだけど、月曜には退院出来るって。その頃には効果も抜けてるはずだって聞いたわ』


 声だけでも安心と喜びが伝わってくる。


「そっか、良かった」


 浮気じゃないかって辛そうに泣いていた景子。

 浮気ではなかったけれど、悪友――ううん、あの不良たちにNを嗅がされて操られていた加藤くん。

 二人がこれ以上大変なことに巻き込まれずに済んで、本当に良かったって思った。


『で、萌々香は昨日なにしてたの? 久斗の状態がわかってすぐに連絡しようとしたんだけれど電話出なかったし』

「そ、れは……」


 景子から連絡があったのは知ってる。

 電話の通知が何件もあったから。

 でもそれに気づいたのはもう日付も変わりそうな時間帯で……。

 流石に遅すぎるからってメッセージで『話は朝に聞くね』と送った。

 話しづらいこともあるし、朝起きてから色々整理しようと思っていた。

 なのに、まさか寝起きすぐに話をすることになるなんて……。
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