三途の駅のおくりもの
「え、俺と?」
「智紀以外に誰がいるのよ」
「いや、だっておまえ、友達とか、他にいるだろ」
舞依と行くのが嫌なわけじゃない。咄嗟に出た照れ隠しのようなものだった。それに、明るくて愛嬌のある舞依は、きっと友達だって多いはず。見かけたことはないけれど。
「嫌ならいーよ?」
「そういうわけじゃ……」
頬を膨らます舞依に弁解しようとしたとき、例のトラ猫が倉庫を離れるのが見えた。舞依もそれに気づいて、いたずらっ子のような顔をする。
「ね、着いてってみようよ」
◆
トラ猫は、気ままに散歩しているようだった。塀にのぼったり、文字通り道草を食ってみたり。通ったことのない道のりを行くと、やがて見覚えのある場所にたどり着く。
「なんだ、ここに出るんだ」
線路の側。俺と舞依がいつも会うところ。そこで突然、トラ猫が走り出す。ネズミか虫か、小さな影を追ったようだ。
そのとき、聞こえてきた。電車が近づく音だ。トラ猫はそれをものともせず、獲物と共に線路の中へ飛び込もうとする。
「ミケちゃん!」
無理だ、間に合わない。そう思ったとき、立ちすくむ俺を追い抜いた舞依は、トラ猫に両手を伸ばす。舞依のからだが電車の前に飛び出す寸前――考える間もなく、俺の手足が動いた。
俺は舞依の手を引き無理やり抱き止めた。そのはずみに俺の眼鏡が吹き飛ぶ。舞依の両手は虚空を掴み、トラ猫は電車の前に飛び込んでいく。
「だめ――!」