三途の駅のおくりもの



「え、俺と?」

「智紀以外に誰がいるのよ」

「いや、だっておまえ、友達とか、他にいるだろ」


 舞依と行くのが嫌なわけじゃない。咄嗟に出た照れ隠しのようなものだった。それに、明るくて愛嬌のある舞依は、きっと友達だって多いはず。見かけたことはないけれど。


「嫌ならいーよ?」

「そういうわけじゃ……」


 頬を膨らます舞依に弁解しようとしたとき、例のトラ猫が倉庫を離れるのが見えた。舞依もそれに気づいて、いたずらっ子のような顔をする。


「ね、着いてってみようよ」





 トラ猫は、気ままに散歩しているようだった。塀にのぼったり、文字通り道草を食ってみたり。通ったことのない道のりを行くと、やがて見覚えのある場所にたどり着く。


「なんだ、ここに出るんだ」


 線路の側。俺と舞依がいつも会うところ。そこで突然、トラ猫が走り出す。ネズミか虫か、小さな影を追ったようだ。

 そのとき、聞こえてきた。電車が近づく音だ。トラ猫はそれをものともせず、獲物と共に線路の中へ飛び込もうとする。


「ミケちゃん!」


 無理だ、間に合わない。そう思ったとき、立ちすくむ俺を追い抜いた舞依は、トラ猫に両手を伸ばす。舞依のからだが電車の前に飛び出す寸前――考える間もなく、俺の手足が動いた。

 俺は舞依の手を引き無理やり抱き止めた。そのはずみに俺の眼鏡が吹き飛ぶ。舞依の両手は虚空を掴み、トラ猫は電車の前に飛び込んでいく。


「だめ――!」


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