三途の駅のおくりもの
舞依の叫びもむなしく電車はトラ猫に当たり――そのまますり抜けていった。トラ猫はこちらに振り返り、何事もなかったかのように鳴いた。そのまま山の方に向かって駆けていく。
「……智紀、今の、見た?」
そう言って舞依は俺を見て、それから、驚いたように大きな声を出した。
「眼鏡は!?」
俺は線路の方を指さした。そこには俺の眼鏡だった残骸が転がっている。電車にひかれた無残な姿だ。
「ごっ、ごめん! 私を助けたから……」
「いいよ、べつに。俺が勝手にやっただけだよ」
「眼鏡なくても見えるの?」
「あー、そこまで目悪くないから。家にスペアあるし」
「そっか……本当に、ごめん。今度弁償する!」
謝り続ける舞依を適当にあしらいながら、俺はトラ猫について考えていた。電車が来ても、その音にさえ反応していなかった。おそらくあのトラ猫は、電車が見えていなかったのだろう。誰にでも見えるわけじゃない、それは人間以外も同じなのか。つくづく不思議な電車だ。
――ふと、思った。あの電車の行き先について、舞依はどうやって知ったのだろう。尋ねると舞依は、いつものようにさびしげに電車の行く先を見つめた。