三途の駅のおくりもの
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「ずいぶん遅かったね。待ちくたびれちゃった」
ボロボロの駅だ。大昔の無人駅、それが風化した跡、そんな風に見える。あの電車が来るにはぴったりだ。そこに舞依はいた。
「おまえ、いつもここに来てたの?」
「そだよ」
なんでいつもの場所に来てくれなかったんだ、そう言いかけてやめた。先に待ち合わせの約束を破ったのは俺だ。
「やりたいことができちゃって」
俺の心を読んだかのように言って、舞依は改札の方へと向かう。静かな場所だ。響くのは足音ふたりぶんだけ。舞依はおもむろに、古びた切符の券売機を指さした。取出口にあるのは一枚の切符。手に取って見ると、今日の日付と見知らぬ名前が印字されている。
「それ、切符の使用期限……とでもいうのかな? とにかくその日になると、持ち主はこの電車に乗るみたい」
つまりこの名前の主が、今日中に死ぬということだ。
「なんでおまえ、そんなのわざわざ見に来て……」
「切符ね、前日になると勝手に発行されるんだ」
俺が事故にあった日。舞依との待ち合わせに行けなかった日。あのとき舞依は、一人でここまでたどり着いたらしい。そこで、券売機の存在を知った。それからは駅まで、魂の見送りをしに来ている、そう語った。
「もし切符の名前が知り合いだったら、見送り以上のことができるでしょ? ほら、小さい村だし、知らない人でも探せば会えるかも。少しでも、心残りがないようにしたいじゃん」
見送りも、人助けも、舞依がやりたいと言うのなら俺に止める権利はないだろう。それでも俺はすぐに死にゆく人たちのために、これからも生きていく舞依がいちいち心を痛める必要はないと思ってしまう。そんな気持ちがあふれて止まない。
「……やめちゃえよ」
「そんなこと言わないで」
「だって、そんな顔するくらいなら――」