日常
 座りませんかとばあちゃんが、立ってるぼくに声を掛ける。
隣の席では姉ちゃんが、恨めしそうにスマホ見る。
 お前が席を譲れよと、高校生たち笑ってる。
 黙ったままの運転手は困った顔で苦笑い。
 心通わぬこの町で、どうやらここまで生きてきた。
仲間も居ないし、金も無い。
それでも明日はやってくる。

 タブレットかぶれの娘たち、夜遅くまで遊んでる。
何処の家でも同じだよ、それはいったい誰の事?
 働きますよと言ってみる。
なぜ働くのと聞いてくる。
 働くことってそんなにそんなに偉いことなの?
 道理も通らぬこの町で、なんとか家族をしょい込んだ。
流すは涙と溜息さ。
どんなに泣いても朝は来る。

 見えない振りして歩くなと、怒鳴った人たち居たよね。
見えないあなたは可哀そう、泣いた人たち居たよね。
 一緒に遊んだやつも居た。
死ぬほど惚れてた人も居た。
 けれどもみんな消えちまった。
目が見えないっていうだけで。
 どうしようもないこの国で、酒を飲んでは管を巻く。
喧嘩したって始まらぬ、それでも明日はやってくる。
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