KISSでチェンジ!
思わず後ろからひっぱたいてやりたくなる。
 このシチュエーションでなんで? はない。

 どれだけ鈍感でも気が付きそうなものだけれど、気が付かないのが良明という男だ。
「良明、話くらい聞いてやれよ」

 良明に『なんで?』と聞かれてフリーズしてしまった女の子に助け舟を出すつもりで声をかける。
すると女の子は初めて純の存在に気がついたように目を丸くした。

 俺ってそんなに存在感がないか?
 少々ショックを受けながらも笑顔を向ける。

「ごめんねこいつ、無愛想なのは昔からなんだ」
「そ、そうなんですね」

 どうにか笑顔を取り戻した女子生徒に安堵して微笑む。
「じゃあ、話を聞こう」

 せっかく緊張がほぐれた様子だったのに、良明の義務的な言葉にまた女の子の表情が険しくなってしまう。
「こ、ここじゃ、ちょっと……」
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