僕の秘書に、極上の愛を捧げます
それだけじゃない。

『エスコートしてくれる、素敵な男性と一緒に来ますから』

サラリと言われて、思わずムッとした。
そういう男がいるということだろうか・・。

でもその表情を見られなくなくて、つい視線を逸らしたりもした。

いつ以来だろう。
自分の手の内にいないことに、これほど執着するのは。

もうずっと、自分の意思とは関係なく常に女性が近くにいる状況だったから、冷たいようだけれど正直誰がいても興味は無かった。

来るものは拒まず、去る者は追わず。
まさにそんな状態だ。

『夜のお相手が豊富で、全く困ってない』

そう言われるのも分からないでもない。
事実は、どうであれ。

『専務のお立場とそのルックスだと、疑いようがないじゃないですか』

彼女は、俺が相当遊んでると思っているんだろうな・・。

「あーーー」

自業自得だ。
弁解しようにも、俺のプライベートには関与しないと言い切られた。

それより、想定外だったのが遠藤だ。
まさか今日会ったばかりで彼女に近づくとは。

それも食事に誘うなんて、その後のことまで考えてのことか・・?

今日は更新したパスポートを受け取りに行かなければならず、早めにオフィスを出たのが幸いした。
そうじゃなければ、彼女は遠藤と・・。

俺は首を横に振った。
余計な想像をする必要はない。

そんなことより、どうやって彼女を振り向かせよう。
どうしたら、俺のプライベートに踏み込んでくれるだろう。

抱きしめて、キスして。
そして・・。

とにかく焦らないようにしよう。
これ以上、誤解されないように。

それにしてもだ。

『外国に婚約者もいるとお聞きしましたよ』

そんな噂、いったい誰が・・何のために?



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