僕の秘書に、極上の愛を捧げます

Side 恭介

ホテルの部屋に掛かっている時計を見上げる。

彼女の飛行機は、いまどのあたりだろう。
慣れないビジネスクラスのベッドで、ちゃんと眠れているだろうか。

「寝てきてもらわないと、困るんだよな・・」

あと8時間ほどで、彼女に会える。
着くのは夜遅くだけれど、話さなければいけないことがいろいろあるからだ。

コンコンコン。

ぼんやりと彼女のことを考えていたところで、オフィス区画のパーティションをノックし、理紗が入ってくる。

「恭介、これから父のところに行くけれど、何か伝えることはある?」

「そうだな・・10分くらい待てるか? 一緒に行くよ。CEOに相談したいことがあるから準備する」

「分かったわ。パーキングで待ってるわね」

ふぅ、と小さくため息をつく。
いま手掛けている案件は、トップシークレットだ。

彼女にさえ、その内容を打ち明けることはできなかった。
それでも、俺は彼女を呼び寄せることに決めたのだ。

何も伝えず、遠く離れた場所でただ俺を待っていてほしいと言えるほど、彼女と俺は関係が深いわけじゃない。

復縁を狙っている遠藤に彼女を奪われるかもしれないし、社内でも彼女に好意を寄せている男が何人もいることを知っている。

俺のそばで笑っていてほしい。
絶対に他の男には渡したくない。

案件を自分のコントロール下に置ける目途がついたことで、もう我慢できなくなった。
まだ日本に戻ることはできないけれど、呼び寄せて、彼女の顔を見て声が聞きたい。

「近くにいてくれる・・それだけで充分だ・・」

本当に大切にしたい相手には多くを望まないものだと、今更思った。
望むどころか、彼女にしてやりたいことがたくさんある。

そういえば、デスクに仕込んでおいた贈り物には気づいただろうか。
彼女へのものだと、はっきりとは言わなかったけれど。

今夜、着けてきてくれれば気づいたのだろうし、気づいていないようなら伝えればいいし、別のものを贈っても構わない。
何がいいだろうか。一緒に選んでもいいな・・。

早く、彼女に会いたい。



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