僕の秘書に、極上の愛を捧げます

Side 恭介

上手いことやられたな・・。

彼女の寝顔を見ながら、フッと笑みをこぼす。
まさか、俺を焚きつけるなんて思いもしなかった。

でも、お互いに限界だったんだと思う。
気遣って、どこか探り合って、嫉妬して・・。

「危うく、手放すところだったよ」

落ちるように眠りについた彼女を、腕の中に抱き寄せる。
深く、深く、何度も繋がった。

自分の想いをぶつけるように女性を抱いたのは、今夜が初めてで。
それに応える彼女の蕩けた身体に、溺れ尽くした。

恋愛には冷めていたはずなのに。
相手の期待ばかり大きくて、それに辟易し、俺は何も求める気にならなかったから。

後腐れなく触れ合って、時間がくれば離れる。
そんな俺が。

ただそばにいてほしいと望んで。
それなのに自分は相応しくないと、引き下がるつもりでいた。

「それはもうやめた。遠藤には絶対に渡さないよ」

「・・ん・・っ」

タイミングよく声が漏れる。
まるで、返事をしたかのように。

「愛してるよ」

その言葉に返事は無かったけれど。
今度は、寝顔に向かってじゃなく起きている時に言いたい。


ブブ、ブブ。
スマートフォンにメッセージが届く。

夜中の2時に誰だろうか。

『待たせたな。ようやく片付いたから、今夜そっちに向かう』

そうか、東京は16時・・。

いよいよだな。
事が動き出す前に寝ておくか。

ふたりを包むようにフェザーケットを掛け直し、彼女の唇にそっとキスする。
やわらかくて、温かくて、とても愛しい。

全て片付いたら、彼女に伝えたいことがある。
俺と・・この先の未来を、ずっと一緒に・・と。

その時、彼女はどんな反応をするだろう。
受け入れてくれるのか、それとも・・。

シチュエーションを思い浮かべつつも、じんわりと巡ってきた睡魔に覆われて俺も眠りについた。



< 80 / 97 >

この作品をシェア

pagetop