僕の秘書に、極上の愛を捧げます
『・・らっ、まぁまぁ、こんなことってあるのかしら!』

・・・・ん?
ベッドルームのドアの向こうが騒がしいな・・

休みの日に、朝から何だ?

寝起きのぼんやりした頭を抱えつつ、起き上がってドアを開ける。

「っ・・小夜子さん!?」

「おはよう、恭介」

満面の笑みを浮かべた小夜子さんと、突然の訪問に苦笑いしている彼女がそこにいた。

「おはよう・・。小夜子さん、朝からどうしたの?」

「ふふ。理紗がね、『いま一緒にいる女性に恭介は本気かもしれない』って言うものだから、寝起きに訪問して白状させようと思って来たのよ。
そしたら先日助けてくれたお嬢さんが出てきて・・。いったいどういうことなのか、分かるように説明してほしいわね」

「ああ、彼女は───」

「私は専務のアシスタントをさせていただいております、宮田と申します。資料や機材が専務のお部屋にありまして、今日の業務のために取りに寄ったところでした」

俺が説明する前に、彼女はそう言って小夜子さんに綺麗に頭を下げた。

「アシスタント・・。まぁ、恭介の秘書さんなのね。私までお世話になるなんて・・本当にありがとう」

「いえ、私もまさか専務のお母さまとは知らずに・・不思議なご縁でした。では、私はこれで失礼します。専務、ご用がありましたらいつでもお呼びください」

ニコリと微笑んで、彼女が部屋を出て行こうとする。

ダメだ、ここで彼女を行かせたら。
またひとりにしてしまう。

「待って」

俺は彼女を追い、肩を抱き寄せて俺の方を向かせた。

「小夜子さん・・母さん、理紗が話していた『いま一緒にいる女性』は彼女なんだ」

「っ、専務・・それは・・」

「いいんだよ。母さん、俺、彼女とこれからの人生を歩きたいと考えてるんだ。
いま、彼女に振り向いてほしくて必死なんだよ」

俺の横で彼女は目を見開き、小夜子さんは少し瞳が潤んでいるように見えた。



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