僕の秘書に、極上の愛を捧げます
第3章

Side 恭介

彼女をホテルに送り届け、俺は空港に向かった。
到着が少し早かったのか、目的の便は既に『到着』のステータスを示している。


「待ったか?」

ラフな格好をした佐伯が、スーツケースを引いて到着ロビーに出てくる。

「いま来たところだ。まっすぐホテルに向かうか? どこか、寄りたい所は?」

「そう・・だな。成宮、クルマ?」

「いや、佐伯に1杯付き合うんだろうと思って置いてきた」

「分かってるじゃないか~」

佐伯と俺は、昔よくCEOに連れて行ってもらったバーに向かう。
多少内装は変わったものの、雑然とした感じが懐かしい。

「いらっしゃい。貴弘(たかひろ)も恭介も、久しぶりだな。潤(じゅん)は、まだ病院でおとなしくしてるか?」

店の中に入ると、カウンターで接客をしていたオーナーがすぐに見つけて手招きをしてくれる。
オーナー・・圭(けい)さんとCEOは大人になってから知り合ったようだけれど、とてもウマが合うらしく名前で呼び合う仲だ。

「はい。退院したらフルスロットルで動いてしまいそうなので、しばらく病院で静養してもらってましたけど・・明日退院です」

「そうか。ふたり揃ってここに来たってことは、ついに・・だろう?」

ニヤリと笑うオーナーに、佐伯も俺も苦笑いする。

「で? どうするつもりだ?」

「圭さん、その『どうするつもり』はCEOの会社のことですか?」

「いや。恭介、俺が潤の会社を心配すると思うか? 俺が気にしてるのは会社じゃないよ」

「だとしたら・・・・潤さんの心配事には、俺がこの先の人生をかけて向き合います」

佐伯がきっぱりと答え、俺はただ頷く。

「そうか・・・・。恭介も納得してるってことでいいんだよな?」

「もちろん。俺は俺で、守りたいものがあるんで」

「へぇ・・ドライな恭介がそんなこと言うなんてな。いい出会いでもあったか?」

圭さんの問いかけに、グッとグラスを傾けながら佐伯が肩を組んでくる。

「すごく素敵な女性ですよ。成宮にはもったいない」

「本当か? 今度会わせてくれよ、恭介」

そのまま話が尽きることはなく、結局バーの営業が終わるまで3人で語り合った。



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