【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
第34話 シェリルの初めてのわがまま
「……シェリル嬢、それは本気、なのか?」

 私のお願いに、ギルバート様は疑い深い目で私のことを見つめてこられる。なので、私は静かに頷く。だって、ギルバート様のお隣に私以外の女性が並ぶことが本当に嫌なのだもの。きっと、ギルバート様はそんな私の気持ちに気が付いていらっしゃらないだろうけれど。

「これが、私の最後のわがままです。……お願いします」

 これからは、大人しくなるから。そう言う意味を込めてゆっくりと頭を下げれば、ギルバート様はしばし考えられたのち「……最後なんて、言うな」とおっしゃり、ぎこちない手つきで私の頭をなでてくださった。

「今からも、たくさんわがままを言ってくれ。……こんな年上の男に出来ることは、シェリル嬢のわがままを叶えることだけだ」
「……ギルバート様」

 ギルバート様のそのお言葉に、私は息をのむ。……だけど、ギルバート様に出来ることはそれだけじゃない。私は、ギルバート様のお側に居たい。ギルバート様のお側で、ギルバート様のことをお支えしたい。だから、他にできることはたくさんある。

「わ、私、きちんと社交のことを覚えますから。……きちんと、頑張ります。ギルバート様の恥にならないように」

 ……不思議だった。今まで、誰かのために頑張ろうなんて思ったことは一度もなくて。それぐらい、私にとって周囲の人間はどうでもいい存在で。なのに今、私はギルバート様のために頑張ろうと思っている。それはつまり、それだけ私の中でギルバート様の存在が大きくなったということなのだろうな。

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