【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
「はぁ、女性の心を貴方はもう少し理解してください。分かりますね? 優しさだけで女性の心を掴めると思ったら大間違いです!」
「……」

 確かに、サイラスさんの言うことはこちらもごもっとも。女性の心は繊細だから、優しさだけでは掴むことは出来ない。だけど、私はこう言う少しポンコツな人は好き……かもしれない。

「……シェリル嬢。そ、その、だな……俺は、どうにもシェリル嬢の気持ちが分からない。……教えてくれ」
「む、無理です! 無理ですから!」

 そんな、意識しているからこうなっているなんて言えるわけがない。そんな意味を込めて私がまた首を横にブンブンと振れば、サイラスさんはまたギルバート様の頭をはたかれる。その後、「本当にバカですね!」なんて小言を零されていた。

「普段から不器用だとは思っておりましたが、本気で恋をしたら今度はポンコツ化なんて、いい大人が何やっているのですか! もっと、シェリル様のお気持ちを汲み取ってください。旦那様はシェリル様のお気持ちを尊重したいとおっしゃっていたではありませんか」
「確かにそれは言ったが、それをシェリル嬢の前で暴露するな!」
「別にいいではありませんか。ヘタレで不器用でポンコツな旦那様の代わりに、私が一肌脱いであげているのですから」
「本当に余計なお世話だな」

 ……私のことを無視して、ギルバート様とサイラスさんは口喧嘩を始めてしまう。……そ、その、私はこう言う場合どういう反応をすればいいのだろうか? そう思いながら目をぱちぱちとさせていると、なんだふと面白くなってしまって。私は「クスッ」と声を上げて笑ってしまった。……あぁ、なんだかおかしい。いろいろと、考えていたことが吹っ飛んでしまった気がするわ。

「ギルバート様。一つだけ、お願いがあります」
「……どうした?」

 そう思ったら、もうこの人のお側に居たいということしか考えられなくて。私はギルバート様の目を見て、静かに口を開いて言葉を紡ぐ。

「私を、今度のパーティーのパートナーとして同伴させてください」

 たったそれだけの、お願いを。
< 108 / 157 >

この作品をシェア

pagetop