【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
「……シェリル嬢。シェリル嬢の言葉には、今回は同意しかねる。……社交界が何だ。もっと健康的になればいい。……シェリル嬢も、そのままの体型が一番だ」

 私の呟きを聞かれてか、ギルバート様は一度「はぁ」とため息をつかれた後、そうおっしゃった。……今のは、褒められた、のよね? その判断がうまく出来なくてただ茫然とする私と、何を思われたのか突然照れられるギルバート様。そんな二人が醸し出す微妙な空気が漂う中、サイラスさんは手をパンっとたたくと「さぁ、準備に取り掛かりますよ!」と言って空気を変えてくれた。それが、とてもありがたかった。

「シェリル様。デザイナーは明日呼びますので、本日は採寸だけ済ませましょうね。何か、ご希望は?」
「……先にお花の様子を見に行きたいわ。一雨来そうだもの」
「そちらのご希望ですか。はい、それは全く構いませんよ。シェリル様は、お花を大層可愛がっていらっしゃいますからね」

 私の希望をサイラスさんはすんなりと通してくれた。

 私が今育てているのはこの国にしか咲かない品種の薔薇、ウィリスローズというもの。育てるのは比較的簡単だけれど、奥が深くて育て方次第で花弁の形や色合いが変わってくるという神秘的な薔薇。……私は、あの花が咲くのを心待ちにしている。

「では、クレアとマリンを呼びまして、まずはお花の様子を見てきてください。他の侍女に採寸の準備はさせますので」
「……そう、ありがとう」

 使用人にはペコペコしない。だけど、それとなくお礼は言う。それは、私がここに来て学んだこと。その教えの通りに私がサイラスさんにお礼を言えば、サイラスさんは満足そうに頷いてくれた。それはきっと……これに関しては、認められたということなのだろうな。
< 111 / 157 >

この作品をシェア

pagetop