【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
閑話4 シェリル、泣く(ギルバート視点)
 ☆★☆

「シェリル嬢」

 帰りの馬車でゆっくりとシェリル嬢の名を呼べば、シェリル嬢の肩がびくりとはねた。……そこまで驚かなくても。そう思うが、それは口には出さない。シェリル嬢は、疲れている。元婚約者と自分を今まで虐げてきた義妹と再会してしまえば、誰だって心が疲れてしまうだろう。

(あとで、リオス伯爵にもくぎを刺しておかなくては)

 それから、リオス伯爵の方も困る。大方金でも積まれて、招待状をアシュフィールド侯爵家に売ってしまったのだろうが……いや、違うな。アシュフィールド侯爵家に積むような金はないはずだ。何か別のものを条件に出されたか。まぁ、それはこの際どっちでもいい。とにかく、シェリル嬢が傷つかないように手を回さなくては。

「……シェリル嬢、今日は疲れた、な」

 しかし、今はもう一つの問題がある。……いざ、こうやって二人きりになると本当に何を話していいかが、分からないのだ。普段はシェリル嬢の方が話題提供をしてくれることが多いが、今日はどこか疲れ切っているため、口を閉ざしたまま。……そんな風にシェリル嬢のありがたさを感じながら、俺は自分のコミュニケーション能力の低さに絶望していた。特に、女性が相手だとこうなってしまう。
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