【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
第43話 嵐の本性
 けど、そこにいらっしゃるイライジャ様は、イライジャ様だとは思えなかった。イライジャ様はどちらかといえば優男風であり、あまり気の強くないお方だった。もちろん、公爵家の令息としての堂々さや傲慢さは持っていらっしゃったけれど。……でも、ここまでではなかった。

「何の御用、でしょうか。不法侵入で警護を呼びます」
「シェリル。残念だけれど、警備の兵士などは一人残らず気絶させておいた。……そこの侍女も、な」
「クレアを傷つけたのは、イライジャ様でしたのね」

 自分でも驚くほど冷淡な声が出た。それに、自分で驚いてしまうけれど、考えなくても私はクレアたちのことを大切に思っている。だから、傷つけたことが許せない。許せるわけもない。

「いくらイライジャ様のようなご身分でも、やっていいことと悪いことがあります。……早急に、お帰りください」
「それは無理な相談だな」

 私の言葉に、イライジャ様はただやれやれといった風に首を横に振られる。その態度は、とても腹の立つもので。私の怒りのゲージが上がっていく。そのため、私がイライジャ様を強くにらみつければ……イライジャ様は「俺と、やり直そう」なんてふざけたことをおっしゃった。……何よ、それ。私を先に捨てたのは、イライジャ様じゃない。そういう意味を込めてさらに強くにらみつければ、イライジャ様は「どうやら俺は、騙されていたらしい」なんておっしゃりながら、私の手首をまた掴んでこられた。……嫌だ。嫌だ。触られたくない。貴方には、死んでも触られたくない……!

「放してください!」
「随分と、主張をするようになったのだな」

 イライジャ様の手を振り払おうとするけれど、イライジャ様は私の手首を放してくださらない。早く追い払って、クレアたちの手当てをしなくちゃいけないのに……! そう思うけれど、イライジャ様が私のことを解放してくださる気配はない。
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