【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
 シェリル嬢は大層強かな女性だ。しかも、何やら特別な力を持っているらしい。使用人たちにも気に入られている彼女と婚姻すれば、きっと使用人たちも喜ぶ。親も納得させられる。それは、分かる。でも、やはり俺の気持ちや都合を押し付けるのは無理だった。……シェリル嬢の気持ちが、最も大切なのだ。

「クレア、マリン」
「あっ、旦那様! お着替えの準備は出来ておりますよ」

 シェリル嬢に使わせている客間に入れば、ニコニコとしながらクレアとマリンが出迎えてくる。そのままシェリル嬢を二人に預け、俺は客間を出て行った。……さすがに、着替えを見るわけにはいかない。同性ならまだしも、俺は異性だ。

「……サイラス。少し、いいか?」
「はい、旦那様」
「妖精とか精霊とかの資料を至急執務室に持ってきてくれ。あと、土の魔力が枯渇した時期の記録も持ってきてくれ」

 俺は上着を脱ぎ、その上着をサイラスに手渡した後そのまま執務室に一直線に向かう。さて、このまま仕事に移ろう。土の魔力が枯渇しているかもしれない。それは、一大事になる。そのため、早いこと手を打つ必要があった。

「かしこまりました。……ですが、前回の土の魔力の枯渇は二十五年前ですよ? そんな、早くに……」
「いや、シェリル嬢の力が正しければ、今年起こっている。……一応念には念を。過去のケースも調べる方がいいだろう」
「……そうですね」

 もしかしたら、過去にもこういうケースがあったかもしれない。そうすれば、原因と解決方法が分かるはずだ。普通、土の魔力が枯渇するのは五十年に一度と言われている。……そのため、俺はその可能性を視野に入れていなかった。

(何か、あるのかもしれないな)

 だったら、早くに手を打ち今後の対策を練る必要がありそうだ。……今日は、徹夜になりそうだな。そう思ったが、シェリル嬢のことを考えれば何故か頑張れる気がした。それは本当に、何故だろうか。
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