【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
「さて……移動させるとは言ったものの、どうやって移動させるか」
そして、第一の問題がこれだった。さすがに年頃の令嬢を担ぐわけにはいかない。かといって、背負うのも気が引ける。……やはり、ここは無難に抱きかかえるしかないだろう。そう判断し、俺はシェリル嬢を普通に抱きかかえる。……やはり、予想通り軽い。実家では虐待紛いの性格を送っていたというが、それにしても軽すぎる。
(ここに来てから、少しでもまともな生活が出来ているのならばいいが……)
シェリル嬢を抱きかかえて運びながら、そんなことを考える。それから玄関の扉を開けてもらい、屋敷の中に入ればそこではサイラスが「……クレアとマリンは、すでに待機していますよ」とにっこりと笑いながら言う。……絶対に、面白がっている。
「……何かがあったわけではない。ただ、シェリル嬢が疲れて眠ってしまっただけだ」
「さようでございますか。……しかし、旦那様もようやくトラウマを乗り越える決意が出来たのですね……! このサイラス、ようやくかと思い感無量でございます……!」
そう言ったサイラスの言葉の意味が、俺にだって少しだけわかる気がした。俺は女性が大層嫌いだ。しかし、シェリル嬢は例外らしい。触れても嫌悪感は抱かないし、そもそも屋敷にいてほしいと思い始めている。今までならば、そんな感情になることなど一度もなかったのに。……今日だって、いきなりとんでもないとんでもないことを口走ろうとした。
――シェリル嬢さえよかったら、俺とずっと一緒に暮らしてくれないか?
そんなことを言ったところで、シェリル嬢が困るのは目に見えていたのに。何故、そう言おうとしたのだろうか。……その理由も、心の奥底では分かっているのだ。シェリル嬢が、素敵な女性だからだと。