【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
「シェリル嬢は、俺の何が知りたい?」
「そうですね。……好物とか、趣味とか、ですかね?」
「何故疑問形だ」

 ギルバート様の問いかけに、私が疑問形で尋ね返せばギルバート様は少しだけ表情を崩されて笑われた。その笑みは、何処か無邪気にも見える。……このお方、こんな風に笑うことも出来たのね。そんな笑みを見ていると、柄にもなく心臓がドクンと音を立てる。……やっぱり、私このお方のことを意識している。そして、それを嫌というほど今日知ってしまった。

(ダメよ。この人には、私よりもずっと相応しい人がいるわ。……私なんて、容姿しか取り柄がないのだから)

 そもそも、辺境伯爵家の当主妻なんて務まらない。令嬢らしい教養など身に付いていないし、社交界でのマナーも覚えている最中。……こんな私じゃ、ダメに決まっている。

(もっと、ギルバート様に似合うようになりたい……かも)

 そんなことを考えていると、ふとそう思ってしまう。私は、ギルバート様に似合うような素敵な女性になりたい。こんなことを思っているのは、きっと弱っているから。弱っているから……人の温もりが恋しいのだ。そう、そうに決まっているわ。

「シェリル嬢?」

 茫然としていた私のことを、ギルバート様が気にかけてくださった。しかも、私の顔を覗きこまれて。そのとても精悍な顔立ちが私の視界一杯に広がった瞬間……私は、やっぱり意識してしまった。

「い、いえ、何でもない、です……」

 毛布で顔を覆いながらそう答える私は、傍から見れば「恋する乙女」に間違いない。……そんなはず、ないのに。
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