【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
「……クレアとマリンは?」
「食器を片付けに行きました。……食事も、わざわざこちらに運んでいただかなくてもいいのですが……」
「いや、絶対安静だから仕方がない。クレアもマリンも、シェリル嬢の世話を焼くことを楽しそうにしているし、気にすることはない」

 私は毎日三食このお部屋で食事を摂っているし、全くと言っていいほどこのお部屋から出ることが許されない。この図鑑だって、クレアとマリンにお願いして借りて来てもらったものだし。……本当のところ、二人の迷惑になっているのではないかと思っていたのだけれど、どうやら二人とも嬉々として私の世話を焼いているらしい。……嬉しいけれど、ちょっと微妙な気持ちになってしまう部分もあるというか……。

「……ギルバート様にも、大変ご迷惑を……」
「いや、俺は気にしていない。シェリル嬢が元気になるのならば、それでいい」

 そうおっしゃって、少しぎこちなく笑われるギルバート様。そんなギルバート様の笑みを見ていると、柄にもなく胸がきゅんとした。……私じゃ、ギルバート様には不釣り合いなのに。なのに、少しずつギルバート様を意識して、惹かれ始めている。どうにかして、意識してしまう気持ちを抑えられたらいいのに。そう思いながら、私は胸の前で手のひらをぎゅっと握っていた。

「あと、シェリル嬢の病状も調べているのだが……その、悪いがまだ原因を特定できていない。……もうしばらく、待ってくれ」
「……それは、まぁ、急ぐことではないのでいいのですが……」

 正直なところ、最近私は自分の病状についてあまり気にならくなっていた。元より、生きることを諦めていたからなのかもしれないし、原因を特定することを諦めているのかもしれない。……だって、ギルバート様程のお方が調べても分からないのならば、どう足掻いても分からない気がするの。

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