【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
第29話 絶対安静の日々
「シェリル嬢。大丈夫か?」
「……はい、かなり元気になりましたよ」

 私が絶対安静を告げられてから三日後。私は寝台に腰かけて本を読んでいた。まぁ、本とはいっても中身は絵ばかりの世にいう図鑑なのだけれど。

 そんな私の寝台の横にある机には、山のように植物の図鑑が積まれている。この国の植物図鑑、隣国の植物図鑑。さらには遠くの国の植物図鑑。もちろん、文字自体はこの国のものに翻訳されている。……とはいっても、本当の本当に絵ばかりなのだけれど。

 そう思いながら、私は膝の上に置いて読んでいた図鑑の一冊にしおりをはさみ、机の上に戻す。それから、やってこられたギルバート様に視線を向ける。どこか慈愛に満ちたようなその表情に微妙な気持ちになりながら、私は「いつもお見舞いに来てくださり、ありがとうございます」と笑顔で告げた。

 私が倒れてから三日。ギルバート様は朝昼晩と毎日三回ほど私の様子を見に来てくださる。ちなみに、基本的には食事が終ってから一時間ほど後にいらっしゃる。今だって、例にもれず昼食の後にいらっしゃっているのだもの。

「シェリル嬢。そんな物ばかり読んで、退屈ではないのか?」
「……比較的楽しいですよ」

 私が読んでいた図鑑を一瞥されたギルバート様は、心底不思議とばかりにそうおっしゃる。なので、私は本の表紙を撫でながらそう言った。植物図鑑は、見ていて楽しいものだ。よく見るこの国の植物の一つ一つにしっかりと名前があって、異国の見たことのない植物さえも知れる。きっと、退屈だと思われるのはギルバート様がこういう系統にあまり興味がないからだわ。

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