【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
「シェリル様は、ご実家でまともな教育を受けていらっしゃらないので、知らないのも仕方がありませんが……。この世には、土、水、火、風、そして光に連動する魔力を持っている女性が度々生まれます。その自然の力と連動した女性のことを、世界では『豊穣の巫女』と呼びます。その『豊穣の巫女』は、普通ならば生まれた王国から手厚く保護されます。……ここまでは、分かりますね?」
「……はい」
「その『豊穣の巫女』は、自然と魔力が連動しているので、連動している自然の力が落ちれば魔力の量も少なくなります。今までシェリル様が倒れなかったのは、土が豊かだったからでしょう。……ですが、今年になって土の魔力枯渇が始まってしまいました」
「つまり、土の魔力が枯渇したから、私の体内の魔力も少なくなった。……そこに、追い打ちがかかって――」
「そう言うことでございます」

 サイラスさんは、綺麗な一礼の後ギルバート様の後ろに引っ込んだ。……だけど、ちょっと待って。私は王国から手厚い保護なんて受けちゃいない。

「シェリル嬢の疑問は、大体分かる。この国では女児は十二の誕生日に『豊穣の巫女』かどうかの適性検査を受けることになっている。だが、シェリル嬢の様子だとその適性検査も受けていないのだろうな。……実際、虐待を行う親の中には受けさせない者も一定数いる」

 ギルバート様は、そうおっしゃって何処か悔しそうなお顔をされた。……そのお顔を見ていると、私の胸がぎゅっと締め付けられるような気がした。私、こんなことになってギルバート様にご迷惑をかけてしまって……。そう思うのに、口からは謝罪の言葉が出てこない。その代わりに出てくるのは、父や継母への怒りだった。

「それから、シェリル嬢の魔力を奪っていた輩だが――」

 ――そいつの名は、エリカ・アシュフィールドだというところまで、特定できた。

 そして、戸惑う私にギルバート様はそう告げられた。……エリカ・アシュフィールド。それは、久々に聞いた私の義妹の名前。
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