君はまだ甘い!
「無いですよ!口説くとか以前に、今まで女の子に告白したことすら無いです」

「へ〜。でも付き合ったりはしたことあるんでしょ?」

「まぁ、それなりに」

ふ~ん、とマヤは好奇心を隠さず、トオルを見つめる。

「イケメンだもんね。黙ってても女から寄ってくるんだ?」

「告白されて流れで付き合うって感じですね、いつも」

でも、と続ける。

「ほとんどが長続きしないんですよ。学生の時は部活で忙しくて、デートもできないからつまらないって文句言われて終わり…」

「社会人になってからは?」

「誰とも付き合ってないです…」

少し表情が曇ったのをマヤは見逃さなかった。

しばらく沈黙した後、トオルがまた口を開く。

「大学二年から約二年付き合った彼女が一番長かったですが、それも実質、恋人らしいことはあまりしていないです。その時期は就職やバスケのことで忙しくて。結局、最後は向こうに別の相手が出来ちゃって…」

「へー、イケメントオルくんでもフラれることあるんやね」

茶化し半分、本心半分でマヤは言った。
だが、トオルは浮かない表情のまま続けた。

「その人に今、ヨリを戻したいって言われてるんです」

「え?彼女、その別の相手とも別れたってこと?」

「…みたいです。でももうこっちは未練もないんですぐに断ったんですが。ここ半年くらい練習を観に来たり、ラインも毎日のように来ます」

「ストーカーっぽいね?」
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