君はまだ甘い!

第9話 邂逅

試合観戦の日は梅雨明けが発表された翌日で、朝から太陽がガンガン照りつけ、暑い一日を予感させた。

「当日は試合前の練習と準備で、迎えに行けなくてすみません」

そう言うトオルに教えられた、名古屋市内にある試合会場へと、マヤとユカは電車を乗り継ぎ向かう。

最寄り駅からはそれほど遠くない距離にあるその体育館は、大きな公園が併設されていて、朝から子供たちの遊ぶ声で賑わっている。

今日は秋の大会の予選だとトオルから聞いていたが、マヤの想像以上に多くの観客らしき人だかりが体育館にぞろぞろと入っていくのが見えた。
その流れについて行くように館内に入る。

観客席はすでに半分くらい埋まっていたが、トオルから、

「できるだけ前の方で見て下さいね!」

と言われていたので、空いていた最前列席に座った。

間もなく試合開始なのだろう。白とブルー、それぞれのユニフォームを着た選手たちがコート内に入っていく。

バスケ選手だけあって、皆一様に背が高い。
その中の、白側の一人がふいにこちらを向き、マヤたちに気づくと、嬉しそうな笑顔で手を振ってきた。

「トオルくんや!」

叫びながらユカが手を振り返す。
マヤは何だか気恥ずかしくて、微笑み返す事しかできない一方で、初めて見るユニフォーム姿のトオルに目を奪われていた。
白地のタンクトップから伸びる逞しい肩と腕、引き締まったウエスト、それに、無駄のない筋肉がついたふくらはぎ…。
正直、女としてゾクッとくるものがある。
おまけに超イケメンときてるんだから、そりゃ、どんな女も放っとかないに決まってる。

実際、選手登場で沸き起こった歓声の中には、「トオルーー!!」「深瀬さーーん!」と言った、女性たちの歓声がひときわ大きく響いていた。
< 58 / 82 >

この作品をシェア

pagetop