君はまだ甘い!
ホーム画面に戻ったスマホを見つめながら、マヤは大きくため息をついた。
トオルが自分のことでルイに相談している。
それを知って、マヤの気持ちはまた揺れた。

(「必死やったで」)

ルイの言葉を反芻する。
なぜそこまで自分にこだわるのだろうか?彼ならどんなスペックの高い女性でも、ほぼ選び放題なのに、なぜこんな、年の離れた器量も良くない中年女に固執するのか全く理解できない。


スマホを再びタッチして、ずっと放置していた、あの日のトオルからのメッセージを開いた。

『今日はごめんなさい。彼女とはきちんと話しをつけました』

『電話で話したいから出てもらえませんか』

そして、昨日新たに二件入っていた。

『週刊誌の記事は全くの嘘です。マヤさんなら信じてくれてると思いますが、念のため』

『オレ、プロに転向することにしました。これからその準備で忙しくなりますが、マヤさんからの連絡は、ずっと待っています』

強張っていた心が少し解れたように、肩の力が抜ける。
素人のマヤでも、トオルはプロでやっていけるというのは分かる…気がする。
彼の華やかで迫真のプレイに息を呑んだのは、まだ記憶に新しい。

でもこのタイミングでなぜ?
澪に「失望した」と言われたから?

様々な感情が交差し、落ち着かないままスマホをテーブルに置いた瞬間、またコール音が鳴った。

一度深呼吸してからスマホをタップし、耳にあてる。

『やっと出てくれた~!』

もしもし、と言う間もなく、トオルの嬉しそうな声が耳に届いた。

『今、ルイから電話がありました。既読にもなったし。出てくれてありがとうございます!』

律儀に礼を言われ、きまりが悪い。

『マヤさん、あの時は嫌な思いをさせてしまって、本当にごめんなさい。オレあとで後悔して・・・

「別に気にしてないよ」

『え?』

「元カノって、芸能人だったんやね!すっごい綺麗な人でびっくりしちゃった。めちゃくちゃお似合いやん!彼女、プロになっても支えてくれるって。良かったね!」

(終わるなら今だ)
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