君はまだ甘い!
『やぁ!元気かい?』

ルイの陽気な声が耳に届き、なぜか涙が出そうになる。

「うん、まあ…」


明るく応えるつもりが、声がくぐもる。

『トオルとうまいことやってると思ってたのにさー』

「は?」

いきなり言われて呆けた声が出た。

『トオルから伝言や』

「へ?」

間抜けな声を連発するマヤをスルーして、ルイは淡々と続ける。

『「プロに転向する決心をした。あとオレに必要なのはマヤさんだけ」やって』

「…!」

ドクン、と心臓が脈打つ。

『かーーっ!なんでオレがこんなこっ恥ずかしいこと代弁しなあかんねん!』

ったく…と吐き捨てるように言う。

『週刊誌見たか?』

「うん…」

『あれ、デマなんはわかってるんやろ?』

「さぁ?どうでもいいわ。私には関係ないし」

『なんやそれ~、拗ねてんの?』

「うるさい!拗ねてへんわ!なんで…?あの人といつ話したん?」

揶揄うルイに大阪弁で応酬しながらも、さりげなく聞いてみる。

『夕べ。向こうからかかってきた。なんや、えらいことになった、言うて。月野澪が元カノって、びっくりやわ。やっぱタダもんじゃないな、アイツ!』

ルイは心底感心したように言う。

『ま、とにかく、あれはガセなんやし、いつまでも未読無視なんかしたるなや。アイツ泣いてるで』

「え?」

『あ、泣いてはないか。はは。ま、でも必死やったで。頼むから連絡くれって。いつまでもひがんでんなや』

「ひがんでないし!復縁したらいいと思うよ。美男美女でお似合いなんやから」

『ハイハイ。やきもちなんか妬いちゃって、マヤちゃんも可愛いとこあるやん!』

ルイはマヤの心はお見通し、とばかりに冷やかしてくる。

『トオルに、早くご機嫌取りするよう言っとくわ!』

「ちょっと!余計なことしな…」

んじゃな!と言ってルイは一方的に電話を切った。
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