君はまだ甘い!
今日は、この後トオルのリクエストで、近くのビルの展望台で夜景を見る、という、いかにもクリスマスデートらしい計画を立てていた。
トオルはビジネスホテルで一泊し、リハビリがあるため明朝に帰る。



「マヤさん、今、オレ、すごくマヤさんを抱きしめたいです!」

「え!」

店を出た途端、先に出たトオルが振り向きざまにマヤの両肩を掴んだ。
まだ時刻は8時を過ぎたところで、裏通りとは言え、ポツポツと行き交う人の姿が目に入る。

マヤは慌てて、トオルの腕を掴む。

「ちょ、ちょっと待って、落ち着いて!」

実はこのことは想定していなかったわけではない。

トオルは、マヤの肩に触れた手を外されて、恨めしそうに唇を突き出している。

「あのね…トオルくん…」

トオルは、伺うような目でマヤを見つめている。

「ユカは今日、友達の家でクリスマスパーティーだって。お泊りの・・・」
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