きみのためならヴァンパイア



雑にベッドに投げ捨てられた。

意地悪そうに口角を上げて、間宵紫月は私に覆い被さる。


「言われても、やめるかわかんねぇけど」


それから始まった、キスにも似た甘噛みは、さっきよりも強く、しつこかった。

味わったことのない感覚に溺れないよう、心の中で抗う。


けど……長い。長すぎる。

血を全部吸い尽くすつもりなのかと聞きたいくらいだ。

もう私の心臓はドキドキしすぎて破裂しそう。


「も、いい加減に――」


私が言いかけたとき、間宵紫月は唇を離した。


「ごちそうさま」


終わったと思うと、どっと体の力が抜ける。

デザートなんて言ってたけど、こんなの毎日やられたら私の身も心も持ちそうにない。


「……お前、もう寝たら?」

「えっ」


彼は私に向かってタオルケットを投げる。


……寝ろって、急に?


でも、今日は本当に疲れたし、今すぐ眠ってしまいたいのは確かだ。

――また、甘えてしまおうか。

甘えついでに、ひとつワガママを言ってみる。


「……ちっちゃい電気とか、ない?」


部屋を微かに照らしているのはカーテンの隙間の月明かりだけ。

間宵紫月は無言のままスイッチを操作し、常夜灯を点けてくれた。


「ありがと……暗いの、嫌いなの」

「へぇ、一緒に寝てやろうか」


そう言う彼に、首を横に振ってみせた。

これ以上、私の心臓に負担をかけないでほしい。


「冗談だよ。じゃあな」


間宵紫月の背中を見送って、タオルケットにくるまれてみる。

なんだかすごく心地よくて、もう起き上がるなんて無理だと感じた。


数時間前に会ったばかりの知らない人の家なのに、自分の家より安心できる。

――変なの、私。


そんなことを考えながら、私の意識は夢の中へ溶けていった。


< 25 / 174 >

この作品をシェア

pagetop