きみのためならヴァンパイア
銀の弾丸




目が覚めて、一瞬、ここはどこだろうと思った。

ああ、私、家出したんだった。

昨日までは、知らなかったベッド。

……間宵紫月の、ベッド。


わきあがってきた恥ずかしさを吹き飛ばすように、カーテンを勢いよく開けた。

もうとっくに日が昇っていたようだ。


どれだけ眠っていたのだろう。

あんなにだるかった体も、すっかり癒えている。


換気しようと窓を開けて――すぐに、自分の間抜けさを思い知る。


「よう人間、歓迎してくれるのか?」


そう言いながら部屋に飛び込んできたのは、知らない男。

薄く笑う口には牙が覗いている。


――ヴァンパイアだ。


けど、なんでこんなところに?

確かにここはヴァンパイア居住区だけど、まさか日光を嫌うヴァンパイアが、こんな快晴の元をうろついているなんて。


「ふっ、ふほうしんにゅ……」


とっさに間宵紫月の名も呼べず、男に体を押さえつけられてしまう。


「黙りな、一口でいいんだ。味見だけさせてくれよ」


男に手のひらで口を覆われて、声を出せない。


お願い、気づいて、助けて――!

そう、祈ったとき。


「ふざけんな、泥棒」


いつの間にかドアを開けて、間宵紫月が立っていた。


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