きみのためならヴァンパイア



夏休みを前に教室で浮かれる同級生たちを見たとき、心底うらやましいと思った。

高校生にもなれば、行動範囲も広がるし、楽しいことだっていっぱい増える。

それなのに私は、どこかに行くのも、なにかをやるのも、何から何まで家族に許してもらえない。

……どうして私だけ、こんな生活なの。


その思いがずっと、心の底に(おり)となって残っている。

それを吐き出すかのように、私は特別うるさい父親に向かって、口答えをした。


「私はハンターになんてならない。もっと自由に生きたいの!」


そう言い切った瞬間だった。頬に強い痛みが走る。

父親に叩かれたのは久しぶりだ。


「自由が欲しければヴァンパイア共を狩り尽くせ!」

「――私は、普通に生きたいだけなんだよ……っ」


普通にしたい。普通に人と仲良くして、普通に恋愛して、普通に好きな仕事して、普通に死にたい。

どうして、そうやって生きる道を選ぶことも許されないの?


……ヴァンパイアハンターなんて嫌い。

ヴァンパイアなんて、大嫌い!


――私は、何も持たずに家を飛び出した。


< 3 / 174 >

この作品をシェア

pagetop