きみのためならヴァンパイア
夏休みを前に教室で浮かれる同級生たちを見たとき、心底うらやましいと思った。
高校生にもなれば、行動範囲も広がるし、楽しいことだっていっぱい増える。
それなのに私は、どこかに行くのも、なにかをやるのも、何から何まで家族に許してもらえない。
……どうして私だけ、こんな生活なの。
その思いがずっと、心の底に澱となって残っている。
それを吐き出すかのように、私は特別うるさい父親に向かって、口答えをした。
「私はハンターになんてならない。もっと自由に生きたいの!」
そう言い切った瞬間だった。頬に強い痛みが走る。
父親に叩かれたのは久しぶりだ。
「自由が欲しければヴァンパイア共を狩り尽くせ!」
「――私は、普通に生きたいだけなんだよ……っ」
普通にしたい。普通に人と仲良くして、普通に恋愛して、普通に好きな仕事して、普通に死にたい。
どうして、そうやって生きる道を選ぶことも許されないの?
……ヴァンパイアハンターなんて嫌い。
ヴァンパイアなんて、大嫌い!
――私は、何も持たずに家を飛び出した。