きみのためならヴァンパイア
王様



ヴァンパイア。

人の血を吸う、人ならざる、悪しき存在。


ヴァンパイアハンター。

ヴァンパイアを狩る、人のために生きる、正しき存在。



そのヴァンパイアハンターの一族の、光栄なる跡取り候補が私、(あかつき) 陽奈(ひな)


……そう、教え込まれて生きてきた。


ーーが、正直なところ、光栄とか全っ然思ってない。

ハンターになるとか絶対にお断りだ。


私は普通に生きて、普通に死にたい。

ヴァンパイアなんて怖い存在に関わりたくもないのに、狩るとか本当、無理すぎる。


そんなわけで、家族みんなに反抗しまくった結果。


いびられいじめられ虐げられて、私は暁家の恥扱い。

けど別にいーんだ、そんなの。むしろ好都合かも。


……なんて開き直って、もう好き勝手しようと思っていた夏休み。


「陽奈、いい加減にしなさい」

「ハンターの自覚を持て」

「私たち一族の使命なんだから」

「ヴァンパイアを狩るんだ」


いつも私のことは厄介者扱いで無視するくせに、私が夏休みに入った途端、ここぞとばかりに家族みんな大騒ぎだ。

ヴァンパイアハンターの極意を教え込むなら、時間がたっぷりある夏休みがちょうどいいとでも思ってるらしい。


普段の私なら、みんなに言い返したりはしない。適当に流して終わりにするのが一番穏便に済ませられるから。


ーーけれど、今日は違った。


< 2 / 174 >

この作品をシェア

pagetop