人質公女の身代わりになったら、騎士団長の溺愛に囚われました

エピローグ 邂逅

 冬の城塞に新しい大公がやって来たとき、ローゼリシア公女は七十歳に至った。
 ローゼリシア公女は悪名高い先代の大公の娘だったが、亡命した後も密かに冬の城塞の人々を支援した、心優しい姫だった。
 彼女が冬の城塞に心を留め続けた理由は、もう一つあった。自分の代わりに騎士団長に差し出された町娘のことだ。
 自分と同い年で、顔かたちもよく似ているというその娘はどうなったことだろう。ローゼリシア公女はたびたび気に掛けたが、その町娘はクーデターの後まもなく、騎士団長と共に姿を消してしまったのだと言う。
 クーデターから五十年が経ち、ローゼリシア公女は新しい大公に招かれて冬の城塞を訪れた。
 街は新しい大公の明るい人柄を映すように活気づき、華やいだ春の時を迎えていた。ローゼリシア公女はバルコニーで手を振り、人々に笑顔を向けた。
 ローゼリシア公女が自分の孫娘によく似た少女をみつけたのは、そんなときだった。
 この街には先代の大公の血を引く者たちも大勢いる。けれどその少女はまさにローゼリシア公女の若き日を写し取ったような、そっくりの姿をしていた。
 ローゼリシア公女は懐かしむようなまなざしを少女に向け、少女も仰ぎ見るようにローゼリシアを見つめ返した。
 ふいに少女の傍らに寄り添い立つ青年が、少女の手を取って彼女を呼ぶのが見えた。
 ……ローザ、おいで。子どもたちが待ってる。
 ローゼリシア公女は自分と名前まで似た少女だと思ったが、一瞬の邂逅はそれだけだった。
 ほほえんだ少女は青年と共に人波に消えて、後には春の風だけが吹いていた。
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