100回目の恋カレー
──あれから10年。

「お、今日も香恋の恋カレーうまそ」

 仕事帰りの涼真は、私の一人暮らしの家にくるなりスーツのネクタイを緩めるとダイニングテーブルに腰掛け、すぐにカレーを頬張る。

「もう涼真に恋カレー、何回作ったかわかんないな」

 私はエプロンを外すと、いつものように涼真の真向かいに座りスプーンを持ち上げる。

「1000回目」

「え?涼真数えてたの?」

 驚いた私を眺めながら、涼真はあっと言う間にお皿を空っぽにして「ごちそうさまでした」とスプーンを置いた。そしてスラックスのポケットから小さな白い箱を取り出し、箱を開けると私に差し出した。

「え……?涼真? 」

「1000回目の恋カレーのおまじない知ってた?好きな人から1000回恋カレー作ってもらったら、その人が俺と結婚してくれるんだって」

 涼真の顔も、手元のダイヤモンドが輝く指輪もあっという間に涙でぼやけていく。

「また泣くし……返事は?」

 涼真は立ち上がると指先で私の目尻からそっと涙を掬ってくれる。

「涼真が好きだよ……ずっと一緒にいて」

「うん、一生幸せにするから」

 涼真が私の額にコツンと額を当てると、私達はこれから永遠に続く二人の道を寄り添って歩ける幸せを噛み締めながら、長い長いキスをした。



──ねぇ、恋カレーって知ってる?

 もしも私がこう聞かれたら、こう答えるだろう。

 それは恋する女の子の為の魔法のおまじない。ほんの少しの勇気という名のスパイスと沢山の愛情をハート型の人参に想いを込めれば、いつかきっと叶う秘密の恋のおまじない。

「涼真大好きだよ」

 私にとって恋カレーは、恋するカレを振り向かせてくれる、魔法のカレーだった。


──恋する私は、今日も恋カレーを作りながら、恋するカレとこれからも永遠に一緒。

< 6 / 6 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:8

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

バレンタインはキスをして
遊野煌/著

総文字数/5,535

恋愛(ラブコメ)11ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
『23時のシンデレラ』バレンタイン短編です。 結婚して4年目の颯と美弥のバレンタインの様子です…💓 ※表紙はフリー素材です。
シルバーリングの微熱
遊野煌/著

総文字数/3,813

恋愛(純愛)7ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
水川小雪は三年ぶりにクローゼットの奥にしまい込んでいた缶の中から、あるモノを取り出した。それはくすんだシルバーリング──。 ※表紙はフリー素材
深夜1時のミルクティー
遊野煌/著

総文字数/13,375

恋愛(オフィスラブ)21ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
お菓子メーカーで働く望月未果(もちづきみか)は仕事帰りに、同期で恋人の高森圭太(たかもりけいた)の浮気現場を目撃してしまう。 あまりのショックでホームでひとしきり泣いているうちに終電を逃してしまった未果。 仕方なく徒歩で自宅に向かおうとしていたところ、同じ部署で五つ年下の後輩である、塩谷智郷(しおやちさと)から声をかけられて──。 「──とりあえずの避難所でうち来ますって聞いてんすけど?」 終電を逃した後から始まる恋?年下男子との、ある一夜のお話。 ※画像はフリー素材です。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop