暴君御曹司のお気に入り
無自覚な気持ち_湊side
《湊side》

「お坊ちゃま」

駅へ歩いていく紬の後ろ姿を見つめていると、後ろから聞き覚えのある声がした。

「竹岩!」

振り向くと、俺のすぐ近くにリムジンが停まっていた。
助手席の窓から竹岩が顔を出している。

疲れている俺はさっさとリムジンに乗り込んだ。

「紬様とのお出かけは如何でしたか?」

リムジンが出発すると、早速竹岩からそう聞かれた。

「もちろん完璧だったぞ!パーティーにも誘ったし、あいつが俺に惚れるのももうすぐだ!」

もう惚れてるかもしれないけどな!という言葉は飲み込んだ。

ス〇バを奢られるという失態を犯したからだ。

「、、そのパーティーはもしかして再来週の創立記念パーティですか?」

「おう!それが1番豪華なパーティーだろ?」

去年までの創立記念パーティーを思い出し、にやりと笑う。

あの豪勢なパーティーに来れば綾川財閥の財力を嫌でも実感することになるだろう。
その御曹司である俺の魅力も。

そんな俺の気持ちとは裏腹に竹岩は顔を曇らせた。

「、、?なんだよ、なんかマズかったか?」

「いえ、お坊ちゃまが悪いという訳ではなく、、、創立記念パーティーにはあの令嬢がいらっしゃるんですよ?」

「あの令嬢?どの令嬢だよ」

「早乙女家の、あのお嬢さんですよ。先月のパーティーでも絡まれてたでしょう」

そんな竹岩の言葉を聞き、記憶を辿ってみる。

「、、、ああ!あいつか!!」

事ある毎に開かれるパーティーで、よく俺に話しかけてくる女が確かにいた気がする。

「それが何だよ。問題あるのか?」

「問題というか、、、」

それっきり竹岩が黙ってしまったので、俺も詮索はしなかった。

俺の頭の中は、紬をパーティーで優雅にエスコートする自分の妄想でいっぱいだったからだ。

「これでトドメだな、、、」

リムジンの窓越しに、あいつと別れた方向を見ながらそう呟く。

もうすぐあいつのハートを掴める、、。

気がつけば俺の頭の中はあいつのことでいっぱいだった。
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