麗しの狂者たち
どうしよう。
最近、自分の気持ちがどんどん誤魔化せなくなっている気がする。
来夏君と保健室でキスしてしまった以降、あれから彼のことを考えると胸の高鳴りが抑えられない。
キスなんてこれまで何度だってしてきたのに、あんなに求められたのは初めてだった。
何故彼はあれ程までに私にこだわるのだろう。
こんな自問自答を繰り返すこと、かれこれ十数回。
やはり、ここは本人にはっきり確認しないと、この沼から一向に抜け出すことが出来ない。
果たして彼は私の質問に答えてくれるのだろうか。
もし、答えてくれたら。
私を“玩具“として見ているのではなく、“女“として見ていると言われてしまったら……。
私は一体なんて答えればいいの?
「……やっぱり、やめよう」
一日の授業が終わり、教室に残って日誌を書き終えた途端、思わず独り言がぽろりと零れ落ちてしまい、そこではたと我に返る。
幸いにも私の周りには人がいなかったので、密かに胸を撫で下ろすと、ぼんやりと窓の外に視線を向けた。
仮に彼から真意を聞いたところで、私の中で答えがはっきりしていなければ意味がない。
渚ちゃんにも言われたように、いつかはこの気持ちに決着をつけなくてはいけないのに、それがまだ出来ないようでは、そもそもとして彼に問う資格すらない。
とりあえず、これ以上考えたところで仕方がないので、私は日誌を閉じると、机に掛けてある鞄を手に持って教室を後にした。