捨てられ令嬢ですが、一途な隠れ美形の竜騎士さまに底なしの愛を注がれています。
「人間は、ドラゴンよりもずっと短命よ。だから、築く関係にも限界がある」
「そういうものなんですね?」
「そういうものよ」

 ドラゴンみたいに千年万年生きることができたなら、関係の再構築のためにかかる十年程度の時間は大したロスではないのだろう。

 だけど、長く生きても八十年の人間には、十年のロスは大きい。本当に大きい。

「私はどうにも、人間という種族に疎いみたいで」
「だれだってそうだと思うわ。自分以外の種族のことを詳しく知っているはずがない」

 研究者などは例外として、一般市民がほかの種族のことを詳しく知ることなどできやしない。

 だから、ギードは悪くない。

「でもね、リーナ。私は人間という種族を知りたいんです」

 聞こえた真剣な声に、顔をあげる。私を見下ろすギードの瞳は、まっすぐなものだった。

「ヴィリは、私が知りたいことは聞けば教えてくれます。……しかし、それだけです」
「聞けば教えてくれるのなら――」
「ヴィリは自分からなにかを発することはありません。私は長く一緒にいますが、彼が私に愚痴を吐いたことは一度もない」

 なにも返せなかった。

「苦しくても辛くても、感情を表に出すことはほとんどありません。他者の痛みに敏感なくせに、自分の痛みにはひどく鈍感です」
「ギード」
「自分が傷だらけでも、私を心配するようなやつです。いわゆるお人好し」

 否定できない。だって、ヴィリバルトさんは本当にいつも――優しい。

「私は正直、ヴィリが心配です。このままだと、壊れてしまうのではないか――と」
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