イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない

◇七夕の約束



 今日は、七夕。


 日曜日で、学校が休みのこの日。小雨が降るなか、わたしは傘を差しながらとある場所へとやって来た。


 ──カランコロン。


 ドアを開けると、コーヒーの良い香りが鼻を掠める。


「いらっしゃいませ」


 わたしに気づいた髪をひとつに束ねた女性の店員さんが、笑顔で声をかけてくれる。


「あら。あなたは確か、慧くんの……」

「はい。こんにちは」


 わたしが一人でやって来たのは、慧くんのバイト先の古民家カフェだった。


 ここへ来るのは、慧くんと初めてデートをしたあの日以来だけど。

 まさか、店長さんがわたしの顔を覚えてくれていたなんて……。


「お席に案内するわね。こちらへどうぞ」


 店長さんに案内され、わたしは窓際の二人掛けの席に着く。


「ご注文はお決まりですか?」

「カフェラテをひとつ。この前来たときに頂いて、すごく美味しかったので」

「まあ、嬉しい。お待ちくださいね」


 店長さんが去っていくと、わたしは店内をぐるりと見渡す。


 すると大好きな人の姿を発見し、胸がドキッと高鳴る。


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