イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない


 お兄ちゃんに、一堂くんと仮のカップルになるように言われてからもうすぐ1週間になる。


 その間、わたしは一堂くんと恋人っぽいことは何もしていないし。そもそも一堂くんが我が家に来たあの日以来、彼とは会話すらしていない。


 あのとき、お兄ちゃんの部屋で一堂くんに『これからは俺の彼女として、たーくさん可愛がってあげるから』なんて言われたけど。


 やっぱり、からかわれただけだったのかも?


 まあ、元々は “ 付き合うフリ ” だけの約束だし。このまま何もないほうが、わたしにとっても都合がいいかな。


 * * *


 翌日の昼休み。


「依茉! ご飯食べよう」

「うん! あー、もうお腹ペコペコ〜」


 わたしはいつものように、杏奈と真織と机を合わせてお弁当を広げる。


「わぁ、依茉ちゃんの卵焼き美味しそう!」

「良かったら、ひとつ食べる?」

「うん! それじゃあ、私のハンバーグと交換しよう」


 わたしが、杏奈とそんな話をしていたときだった。


「本当だ。その卵焼き、すごく美味しそうだね」


 突然わたしたちに、話しかけてきた人がいた。


「えっ、一堂先輩!?」


 いきなり現れた一堂くんに、真織が素っ頓狂な声をあげる。


< 48 / 295 >

この作品をシェア

pagetop