α様は毒甘な恋がしたい


「見てみて! ビルの上のスクリーン占領してるの、戒璃(かいり)様たちだよ!」

「キャー、ほんとだ! かいり様カッコいい!」


 えっ、戒璃くん?


 脳内に毎日100回は現れる、私の最推し。

 彼の名前が耳に飛び込んできて、私は意識を過去から現在に戻す。

 

 ここは駅前広場。

 今の時間はただの溜め池と化している、噴水の前。



 高校の帰りだったと思い出した私・七星(ななほし)美心(みこ)は、見知らぬ彼女たちの声につられるように視線をあげてみた。

 さしている日傘を背中の方にずらし、視界に入っていた邪魔もの全てを排除する。



 本当だ!

 駅前広場の目立つところにある大型スクリーンに、戒璃くんが映ってる!



 ギターの弦をはじきながら歌う姿、あいかわらず優雅でカッコいいな。

 普段は柔らかい物腰で笑顔を振りまくのに、ライブ中はまるで別人。

 ワイルドで男らしい皇帝のような圧倒的存在感が、たまらないんだよね。

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