つれない男女のウラの顔
助手席で窓の外をじっと見つめている彼女の横顔は不安げで、泣き腫らした目を見て胸が痛んだ。
何度その手を取りそうになったか。彼女に触れたいと思う度に、ハンドルを握る手に力を込めた。
着くまで寝ていればいいと言ったが、花梨はうとうとすることもなくずっと起きていて、それどころかこの状況で俺の心配ばかりしていた。
今は親のことだけ考えていればいいのに、こういうところが放っておけなくて、つい手を差し伸べたくなる。思いやりがある奴だからこそ一緒にいても疲れないのだが、こんな時くらい甘えてくれたらいいのに。
まぁでも、普通に考えてこの状況で眠れないよな。花梨の寝顔が見られるだろうかと、少しでも期待してしまったことを反省した。
ただ「よそ見はやめてください」と唇を尖らせる顔が可愛くて、その横顔をずっと見ていたかった。運転中でなければ、もう少し見ていられたのに。
そんなことを考えながらふとナビを見ると、表示されている到着時間まで残り20分になっていた。
元々車を運転することは苦ではないが、今日はいつも以上に時間が過ぎるのが早く感じた。言葉を交わした数は少ないのに、花梨といるといつもこうだ。
もう少し遠くてもよかったのに、と心の中で呟きながらインターチェンジを降りる。初めて来たこの町は、どちらかと言うと田舎寄りだった。ある程度の店は揃っているし、車も走りやすく落ち着いた雰囲気で住み心地は良さそうに感じた。
花梨が育ったこの町の景色を、なぜか目に焼き付けておこうと思った。
「あ、ここは私が通っていた小学校です」
小学生の頃の花梨はどんな感じだったのだろう。
今の花梨は、会社ではマスクをつけて表情を見せず、一匹狼で近寄り難い。とにかくクールなイメージだが、裏の顔は全く違って謙虚で明るい。
照れた時の赤い顔も、雷に怯える姿も、たまに見せる屈託のない笑顔も、全部かわ…い…………。