つれない男女のウラの顔
こんなことなら連絡先を聞いておけばよかった。花梨のことだから、俺のことを気にしてすぐに戻ってくる可能性が高いからだ。
しかし他部署の部下に連絡先を聞くのってどうなんだ?相手は断れないだろうし、さすがにまずいか。
というか、花梨だけでも明日は休みを取って、このまま泊まった方がよかったのかもしれない。土日も家族と過ごしてもらって、帰りはまた俺が迎えに来ればゆっくり出来たのに。
思わず溜息を吐いて、窓の外を眺める。この待ち時間に仕事のことでも考えようと思っていたが、全く集中出来ない。
とりあえず仕事は諦めて、ドリンクホルダーのコーヒーに手を伸ばした時だった。前方に人影が見えて、その手をそのままドアハンドルに掛けた。
暗闇から現れたのは案の定花梨で、彼女と分かった瞬間慌てて車の外に出た。
思ったより早い帰りに心配しつつも、花梨の顔色はさっきより良くなっているように見えてほっとした。「おかえり」と声を掛けると、花梨は安心したように顔を綻ばせた。
花梨の話を聞く限り、ご両親が思ったより元気そうで安心した。何より、隣で俺に報告する彼女の横顔がとても穏やかで、思わず見入ってしまった。
本当に家族思いの良い奴だ。
「親御さんも、花梨に会えて幸せな時間を過ごせただろうな。俺も花梨とドライブが出来てよかった。また何かあったら言って。いつでも連れて来てあげるから」
口をついて出た言葉に自分が一番驚いた。俺はいつからこんな言葉をサラッと言えるようになったんだ。まぁ、全て本心なのだが。
花梨が望むなら、またいつでも連れて来る。むしろ、花梨が他のやつとここへ来ることなんて、今は想像したくない。