つれない男女のウラの顔

夜景の見える海沿いの公園。事前にピックアップしていたデートスポット。

見事に周りはカップルだらけで、堂々とイチャついている男女もいる。

そんなカップルを見た花梨の頬が、ほのかに赤く染まっている。その純粋さが俺を刺激していること、花梨は気付いていないのだろうな。


「カップルって…こういう場所でもキスするものなんですね…」

「俺達もしてみるか?」


口をついて出た言葉に、自分でも驚いた。心の声が自然と漏れたと言った方が正しいのかもしれないが。

何度もイメトレはしたが、さすがにここまでするつもりはなかった。というか、さすがにアウトだろ。

花梨といると自分が自分じゃないみたいだ。歯止めが効かない。触れたくて仕方がない。


花梨の目が大きく開かれる。分かりやすくテンパる花梨を見て、やはり踏み込み過ぎたかと反省した。周りの雰囲気に流され、調子に乗ってしまったことが恥ずかしい。

おそらく心のどこかで、今ならいけると期待していたんだ。
今日いちにち、花梨は一度も俺の手を振りほどかなかったから。
「ずっと見ていた」「憧れを抱いていた」なんて言葉を貰ったから。

花梨が返事に困っていると思い「これはさすがにセクハラになるか」とこの話はなかったことにしようとした。それなのに…


「キス、してください」


俺の中で何かが弾けた。「後悔しない?」と尋ねておきながら、ここでやめるつもりはなかった。

髪に触れ、ゆっくりと距離を詰めると彼女の匂いが鼻腔をくすぐった。込み上げてくる気持ちを抑えながら唇を奪うと、花梨は繋いでいる手に力を込めた。

一度なんかじゃ足りないが、なんとか欲に耐えて唇を離すと、真っ赤な顔をした花梨と視線が重なった。
< 206 / 314 >

この作品をシェア

pagetop