つれない男女のウラの顔
「今日はマスクしてないんだな」
「あ、うん。久しぶりに匠海くんに会うのに、さすがに失礼かなって」
「だからよく分かる。京香、あまり元気がなさそう」
「え?」
やばい、最悪だ。どうやら顔に出ていたらしい。
匠海くんは母のためにせっかくここまで来てくれたのに、なんて失礼なことを…。
「まあ仕方ないよな。おじさんのこと、心配なんだろ?」
匠海くんが言いにくそうに眉を下げるから、胸が痛くなった。
ごめん、違うんだよ。今の私は、自分のことばかり考えてる。
家族が大変な時に、私はどうして…。匠海くんでさえ、私の家族のためにこうして足を運んでくれているのに。
「おじさんはもちろん、おばさんも心配だけど、京香は大丈夫か?何かあればいつでも相談してくれたらいいからな。言ってくれればおばさん達の様子も見に行くし」
ひとりっ子の私にとって、昔から匠海くんの存在は本当に大きかった。まるで本当の兄弟のように親身になってくれるからだ。
「ありがとう。匠海くんにも心配かけてごめんね。そろそろ検査結果が出ると思うんだけど…」
「何もなければいいな。俺も一緒に願っておくよ」
てか腹減ったな。と匠海くんは伸びをしながら呟く。そんな彼を余所に、私は成瀬さん達のことばかり気になっている。
だけどさすがに、ここまで来てくれた彼に“やっぱり帰ります”なんて言いづらい。
「匠海くんは…何が食べたい?」
「んーそうだな。オムライスとか?カレーもいいな」
「すぐ近くにランチが美味しい喫茶店があるの。量も多くて、この辺では結構有名なお店なんだけど…」
「いいな、そこ行こうよ」
やっぱり無理。このまま帰るなんて出来ない。
マイコも幼なじみは大切にしろって言ってたし、匠海くんもご飯だけでいいって言ってたし。それに、母から預かった荷物を態々ここまで運んでくれたお礼もしたいから。
ご飯だけ。ご飯だけ食べたら帰ろう。