つれない男女のウラの顔
部屋の前に着き、俺がドアを開けて花梨に入るよう促すと、照れくさそうに足を踏み入れた彼女が、静かに口を開いた。
「私も、気付いた時には、旭さんとずっと一緒にいたいと思うようになってました。いつでも会える距離なのに、会えない時間がさみしかったです。匠海くんとのデートの報告をした時、あっさりと背中を押されたのが悲しくて」
「本当はあんな言葉をかけたかったわけじゃないんだ。傷付けてごめん」
「いえ、私が悪いんです。成瀬さんは優しい人だから。そう言うように仕向けたのは私というか…」
靴を脱いだ彼女を壁に追い詰め、まだ話している途中にも関わらず、彼女の顎を掬いあげ唇を塞いだ。
「もう二度と、他の男とデートなんかしないでほしい」
「…あ、さひさん…」
「これが本音だよ。京香のことになると、余裕がなくなる。いつも平常心を保つのに必死だ」
引いた?と尋ねると、花梨は小さく首を横に振って、俺の目を真っ直ぐ見据えた。
「私しか知らない旭さんの姿を、もっと見せてほしいです」
ああ、もう。この女は俺をどうしたいんだ。
込み上げてくる感情を吐き出すように、再びその唇を塞ごうとした。けれど、
「旭さん、先に着替えた方が…」
花梨は軽く躱しながら俺の胸を押した。その小さな抵抗すらも愛しく思えて、その手を取り壁に縫いつけた。
「あと一回だけ」
そっとキスを落とすと、今度は抵抗せず受け止めてくれた。調子に乗った俺は、一回どころか何度も唇を重ねた。
歯止めがきかない。もっと欲しくなる。
自分でも抑えきれないこの感情を、本当に受け入れてくれるのだろうか。
頼むから、引かないでくれよ。