つれない男女のウラの顔
「なんで成瀬さんも赤くなるんですか」
「そっちがそんな反応するからだろ。真に受けるなよ」
バツが悪そうに俯いた成瀬さんは「とにかく花梨はベッドだから」と強く言い切ると、押し入れからタオルケットを持ってきてドカッとソファに腰を下ろした。
これが男の環境で育った証拠ということだろうか。スマートに見えて実は慣れていない感じが、ちょっと可愛く思えてしまう。
「ソファだと体が痛くなりませんか?」
「俺はよくここで寝落ちするから慣れてる」
「成瀬さんでも寝落ちしたりするんですね。クールになんでも完璧にこなしそうなのに」
「どんなイメージだよ。俺だってズボラなところはあるから」
乾ききっていない黒髪から、同じシャンプーの匂いがしてゾクゾクする。ほんのり火照ったその横顔は見惚れるほど整っていて、目が離せない。
「今日は疲れたろ。ベッドでゆっくり休むといい」
世話の焼ける間抜けな女を部屋に招き入れ、疲れたのはきっと成瀬さんの方。それなのに、私を気遣ってくれる彼を、心の底から優しい人だと思った。
「成瀬さん人が良すぎますよ。今度お礼に大量のプチトマトをプレゼントしますね」
「大量は遠慮しておくけど、少しなら」
「やった。たっぷり愛情込めて育てますから」
「…変なやつ」
ふっ、と吹き出すように成瀬さんが笑った。その瞬間を見逃さなかった。
自然と私の頬も緩んだけれど、誤魔化すように手に持っていたビールを一気に飲み干した。
ゆっくり休めと言われたけれど、成瀬さんのベッドに寝転がって、心が休まるわけもなく。
ほとんど眠れなかったのは、ここだけの話。